ブログでは、医療Wi-Fiネットワーク向けの市場ドライバーの概要を説明します。
Wi-FiエコシステムがCOVID-19から受ける影響について Spirentが最近発行した電子ブックでは、 経済、事業、政府および消費者の行動など基礎的な要素が、Wi-Fiの導入やテストに及ぼす影響について説明しています。大規模公共施設(LPV)やホスピタリティなど、一部のWi-Fi市場セグメントは回復が困難な状況にありますが、医療業界は別の意味で困難な局面にあります。
Frost and Sullivanによる 最近のレポート(2020年4月)では、「米国の遠隔医療市場は、2025年に向けて7倍という驚きの成長を達成すると見込まれており、5年CAGRでは38.2%に換算されます。2020年は、遠隔医療市場は怒涛の成長が見込まれ、前年比64.3%増となる予想です。」
世界保健機関(WHO)によると 遠隔医療とは 医療従事者と患者が距離的に離れた状態で提供される医療サービスです。遠隔医療では、疾病や負傷の診察や診療に関する情報の交換に加え、リサーチ、評価、医療プロフェッショナルの継続的な教育に、ICTが使われています。
Wi-Fi 6は、医療業界が直面する様々な課題を解決する上で役立ちます。
Wi-Fiは数十年に渡り、世界中の病院や医療施設で選好される 無線テクノロジーです。なぜなら、Wi-Fiは室内環境において優位なテクノロジーであり、また多くの場合、医療従事者にとって 最もコスト効率が高いオプションだからです。結果として、医療業界において、シンプルな用途からミッションクリティカルなリアルタイムのアプリケーション(カルテへのユビキタスなアクセス)に至るまで、Wi-Fiテクノロジーを搭載した医療機器の数が増えています。
FDA 510k認証など、米国で製品が認可されるためにクリアすべき厳格な規制要件、患者の安全やプライバシーに関するルール(米国のHIPAA、欧州のGDPRなど )、時間を問わず医療ケアを提供する必要性(24時間365日)などにより、医療業界においては、新たなテクノロジーが導入されるまでに、より長い時間を要する理由が存在します。一方で、Wi-Fi 6がもたらす様々な新機能や保証は、医療従事者にとって、デバイスやネットワークのアップグレードを真剣に検討する動機付けを提供します。
医療従事者にとってのWi-Fi 6のメリット
Wi-Fi 6は、旧規格であるWi-Fi 5やWi-Fi 4にはない、いくつかのメリットをもたらします。これらは、ダウンリンクおよびアップリンク(DL/UL)向け直交周波数分割多元接続(OFDMA)、ダウンリンクおよびアップリンク(DL/UL)向けマルチユーザー多重入出力(MU-MIMO)、ターゲット ウェイク タイム(TWT)です。
Wi-Fi Alliance(WFA)が提供する企業向けの最新のセキュリティ規格であるWi-Fi Protected Access 3(WPA3)との組み合わせにより、Wi-Fi 6は、信頼性や効率性が高く、また安全なWi-Fi接続を提供し、診療や医療ワークフローで医療従事者にメリットをもたらします。
Key Wi-Fi 6 features
OFDMA:病院など密集した環境において、(前世代までの製品と比較して)より高い集約スループットやより低いレイテンシを可能にします。OFDMAの主要な利点は、周波数領域においてスケジュールに基づくリソースの分配を可能とする機能であり、それが組織にとってWi-Fiトラフィックを優先する動機付けとなります。例えば、患者モニタリングやページングなど救命に関するトラフィックデータは、より影響を受けにくい、IoMT(医療分野におけるモノのインターネット)などのトラフィックに優先されます。
MU-MIMO:より高い帯域幅のアプリケーションや大量のデータパケットに特に適しているMU-MIMO(最大8x8まで対応)は、アクセスポイント(AP)が一定時間内により大量のデータを伝送することを可能にし、またより多くのクライアントに同時並行でサービスを提供することを可能にします。ハンドヘルドのデバイスからの全身MRIの画像へのアクセスから、医師と患者が話し合う際に使用するHDビデオに至るまで、医療のアプリケーションはより高い帯域幅を必要とするため、MU-MIMOによるサポートの対象となります。
ターゲット ウェイク タイム(TWT):IoMTデバイスの多くは、バッテリーで駆動します。TWTにより、アクセスポイントやIoMTデバイスは決まった時間に「目覚め」ます。病院や医療機関など密集した環境で複数のWLANを導入するシナリオでは、TWTにより電力消費量の削減が可能となり、IoMTデバイスのバッテリーライフを延長でき、またWi-Fiネットワークの混雑を緩和できます。
WPA3:医療業界では、重要な医療情報や患者記録の保護が規制で定められており、そうした情報が無線で伝送される場合は特に重要となります。最新のWPA3規格は、より強固なセキュリティ保護について規定し、2通りの方法を定めています。
WPA3-エンタープライズ:WPA2と異なり、WPA3-エンタープライズは192ビットのセキュリティ機能を提供し、企業環境でより強固なセキュリティシステムを構築し、重要なネットワークへのハッキングを困難にします。
WPA3-パーソナル:WPA3-パーソナルは、WPA2-パーソナルで使用されたプリシェアードキー(PSK)の代わりに同等性同時認証(SAE)(RFC 7664)を使用し、フォワードセキュリティを提供し、データトラフィックの保護をサポートし、オフラインの辞書攻撃を防ぎます。
またWi-Fi 6は劣位互換性を持ち、旧型のクライアントで最新のWi-Fi 6デバイスの使用を可能とします。この点は、様々な世代の、数千ものWi-Fiデバイスが同時にネットワークに接続される医療施設において、特に重要となります。
この ブログの続編では、医療従事者向けのWi-Fiデバイスやネットワークのテストに対する考察を行います。