Open RANへの移行に関する前回の投稿では、オペレーターが新たなテクノロジーへさらなる展開を試みる中、のしかかる重圧について解説しました。これは簡単な労力では済みません。Appledore Research社は、Open RANコンポーネントとサービスに対する合計の出費は2026¹年に112億ドルに達し、大部分のセルラー拠点へ実装が進むと予測しています。
多くのオペレーターにとって、Open RAN(ORAN)環境への移行は費用を節約して柔軟性を上げられるために必須です。彼らは、マルチベンダー環境で収益を上げ、新たな展開地域で新規サービスをローンチし、最新の市場ニーズを満たすためにネットワークを多様化させようと試みています。これにかかる時間と費用は、膨大に上る可能性があります。これは、包括的な連続テスト戦略を中心に、ロードマップを明確にすることを意味します。
昔ながらの方法を捨てる時が来ました
従来のモバイルネットワーク環境でのテストは、端的に言えば「手直しして繰り返し」と化しました。機能とアプリケーションが明確に定義され、ベンダー固有のテスト環境を設定することで、パフォーマンスと相互運用性に関する問題は最小限に留められました。
Open RANは成熟しておらず、予測不可能なため、オペレーターはこの快適な環境を脱して、状況の変化に対応し続ける厳しい運用への移行を迫られます。ベンダー数、ソフトウェアのアップデート、実装される環境、セキュリティ面の課題が増え続け、インターフェースがオープンなため、常に状況が変化し続けます。
テスト要件もまた、実装目標に応じて変化します。新たなコンシューマーサービスは、そのほんの一端にすぎません。オペレーターはネットワークのエッジで新たな提供サービスを用意し、プライベートネットワークを立ち上げ、地理的な対応範囲を拡大することになります。こうした目標を、パフォーマンスと品質に基づくテスト戦略に当てはめる必要があります。ユーザーエクスペリエンスが劣化し始めた現場ではなく、ラボで問題を発見するほうが、はるかに低予算で済むのは変わりありません。
顧客とのOpen RANテストの話し合いを通じて、当社はテストを困難にしすぎる決定が下されることのないよう、誘導しています。例えば、テスト実施をベンダーに依存し続けないこと(ベンダーの中立性に疑問があるためです)、個別コンポーネントの検証を終える前にエンドツーエンドのテストへ移行しないことなどです。相互運用性が確立された状況ですら、エンドツーエンドのスタックが大規模に性能を発揮するよう保証するためには、パフォーマンスと容量のテストも必須です。最後に、後に起こるであろう予期しない不具合を解消するために、通常の条件と特殊な条件の両方でテストする必要があります。
成功を納めるOpen RANテスト戦略
目標や個々の状況が異なるため、テスト戦略は1つとして同じものはありません。それでも、最も成功する戦略は、以下に述べる重要な段階を経る必要があります。以前の投稿ですでに、以下の段階の一部で行う決定の例を紹介してきました。では、テストの観点から、いったい何が起きるのか、詳しく見てみましょう。
隔離または「包囲」テスト – この段階では、オープンな中央ユニット(CU)やオープンな無線ユニット(RU)などの結節ネットワーク機能がエミュレートされたトラフィックで囲まれ、現場で起こりうる実世界の様々な状況を表現します。目標は、個別のコンポーネントが予想されるトラフィックと機能に対処できるか確認することです。上記の通り、こうしたコンポーネントがネットワークの弱点と化すことがないよう、ピーク時のパフォーマンスと容量レベルでテストする必要もあります。
漸進または「隣接」テスト – ここでは、各種のネットワーク機能が組み合わされて一緒にテストされます。RUと分散ユニット(DU)、あるいはDUとCUを組み合わせ、トラフィックで囲まれます。各種の無線環境もエミュレートされ、容量とパフォーマンスのレベルが様々に変化します。この段階では、オペレーターは単なる相互運用性だけでなく、大規模な相互運用性をもテストします。重要なコンポーネントが、現場でどう協働するかを早期に確認できます。この段階ではすでに問題が起こり始めており、個々のベンダーがバグを修正し、相互運用性やその他のネットワークのボトルネックが見つかる可能性があります。オープン規格は解釈が異なり、ラボで独自実装を微調整する必要があるため、こうした問題が起こることは想定済みです。
エンドツーエンドテスト – 個別にテストされた機能は、コアネットワークと共にまとめてテストされ、システム全体へ現実的なトラフィックが投入されます。様々な3GPP手続きが検証され、特定のアプリケーションに対してサービス品質が測定され、負荷条件がもう一度モニタリングされます。さらに問題が起こるのは避けられませんが、オペレーターはORANソリューションを市場に投入する段階に近づきます。
連続統合と連続実装のテスト – 本当のことを言えば、Open RANテストには「最終」段階は存在しません。オペレーターは連続統合と連続実装(CI/CD)手法を採用する必要があります。言い換えれば、新しいアップデート、パッチ、セキュリティの脆弱性、ベンダーが加わっていくため、この段階での作業は継続していきます。このため、Open RANのテスト戦略を成功させるには、自動化が必須です。これはラボでの費用とテスト時間を節約し、CI/CD実装のフレームワークを提供するために必要です。テストケースの量が増えることは難しいと捉えられるかもしれませんが、次世代のラボとテストの自動化を利用すれば、時間と費用を節約して、同時にテスト範囲を増やし、現場での故障を減らせます。Open RANの重要な保証の1つに、サービス展開の加速があります。これは、パフォーマンスを落とす問題をリアルタイムに発見するため、連続して動作し続ける自動化テクノロジーと組み合わされた、自動化テスト環境でのみ可能となります。
次回の記事では、実装ニーズに合わせて最適なOpen RANテストパートナーを選択する方法について解説します。同時に、Spirentの2021年5Gレポートもぜひダウンロードしてください。来る年に備えた市場の牽引要素、インサイト、検討事項を協調し、Open RANで今後何が起こるか、当社の考えを披露します。
¹Open RAN -競争とイノベーションに向けたRANエコシステムの開放、Appledore Research社、2020年12月